▼6年も7年もたつのに・・・▼

 仙台でJBBF公認指導員講習会が開催された2009年3月のこと。いつものサプリメントの摂り方に関する私の講義が終わった後、当時は気仙沼でジムを開いたSさんが手を上げ、「アメリカなどでトランス脂肪酸が健康に悪いとされているが、日本ではどうなのか?」と質問されました。
 トランス脂肪酸とは、液体状の植物性油脂に水素を添加し、輸送や加工に便利にした固形油脂のことです。マーガリンやショートニングといった加工油脂のことです。バターの代用になるマーガリンは経済的に豊かになった日本ではあまり使用されません。ショートニングはサクサクした食感が出せるため、パンやケーキ、クッキー、ドーナッツ、スナック菓子などに多く使用されています。甘くない煎餅やおかき類、ファストフード、インスタント食品などにも使われています。
 意外なところでは、コーヒーに用いられる代用ミルクに使われています。

▼トランス脂肪酸の恐怖▼

 たまたま私は食品関係の業界誌で「トランス脂肪酸は健康に悪い」と知っていました。
 バターを放置するとハエ類が集まるのに、固形のトランス脂肪酸には虫が寄ってきません。それだけでなく何日経過しても腐敗しないのです。まるでプラスチックのようだと表現されていました。なので、当然のことですが、人間が口から摂っても胃腸で消化されるはずがありません。血管内にいつまでも残るか、糞便として丸ごと出るかしかないのです。
実際に8万人をアメリカで調査したところ、1日の摂取カロリーに占めるトランス脂肪酸の割合が2.8%以上の人は1.3%の人より心筋梗塞になる割合が3~4割も多かったと発表されています。WHOでは摂取カロリーの1%以下になるようにと規制を設けたのです。
「さすがSさん、情報が早いですね。日本でも報道が出ているので近いうちに規制されるでしょう」と当時の私は楽観的でした。

▼あまりにも遅い日本政府▼

 けれども日本の政治家やマスコミが本気で取り組んだのは今年になってからです。Sさんの質問から6年もたってしまいました。
 説明では「日本の男性は摂取カロリーの0.7%、女性は0.8%であり、WHOの規制の1%まで達していない」とのことでした。
 しかし、容易に計算しにくいトランス脂肪酸は実態がどこまで明白になるのでしょうか? 東京大学など8つの大学が共同して2010年に調査したところ、男性の場合はWHOの規制値を超えた人が10%ほどだったのに対し、30代女性は33.3%、40代女性は37.9%もの人が規制値を超えていたといいます。心筋梗塞になる確率がきわめて高く危険といえます。
 この年代の女性はケーキなどの菓子類を多く食べています。洋食が中心で、ファストフードなどで食べる機会も多いようです。日本食が多い60代が男性3.4%、女性3.2%と少ない数字なのと比べれば明らかです。
 以上から言えることは次の通りです。
①ケーキ、クッキー、おかきなどはあまり食べなくいこと。
②コーヒーなどを飲むとき、付いているクリームフレッシュなどの小さな容器入りは使わない。本物のミルクを要望する。
③外食やレトルト入り食品は最小限にする。危険な油脂類が使用されやすい。
 現在はアメリカやヨーロッパだけでなく、韓国や中国でもトランス脂肪酸の含有量を食品に表示するよう義務づけられています。2g以上の食品は流通そのものが禁止です。日本は「あまりにも遅れています。

著者プロフィール

野沢秀雄(のざわ・ひでお)

1940年、京都生まれ。京都大学農学部、東京衛生学園鍼灸科卒業。健康体力研究所を創立し、現在顧問。主な著書に、「自己トレーニング法」(青春出版社)、「一週間でやせる本」(永岡書店)、「リアルエイジがわかる本」(永岡書店)、「スクワット超健康法」(講談社)。最新刊として「体の中から柔らかくすれば必ずやせて、病気にならない―野沢式やわらか体操」(ベストセラーズ)がある。

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主な職歴

昭和39年(1964)明治製菓株式会社入社
昭和51年(1976)健康体力研究所設立。所長。
昭和59年(1984)有限会社ヘルススサービス設立

情報発信

フェイスブック:https://www.facebook.com/hideo.nozawa.92?ref=br_rs

h_nozawa

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